本や映画の感想集

最近はThe Doorsを聴いている

都築響一が撮った東京。「TOKYO STYLE」を読んで。

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TOKYO STYLEは、インテリア雑誌には載らない、だけど東京ではこういう暮らしを選択した人達も実はたくさんいるんですよと、素敵な暮らしを膨大な量で見せてくれた。お洒落ではないけれど好きに暮らしている・・・という文脈で語られることが多いと思うが、僕にとってはこれ以上は無いくらいお洒落なものだった。あこがれた。別に洗練されたもの、すっきりとしたキレイなものに対するカウンターとかではなくただ単純に。

 

僕が上京して最初に住んだのは、風呂なしだけど、トイレ(洋式だった!)と小さな流しのあるアパートだった。しかも○○荘というネーミングの。90年代後半でも、このスタイルのアパートはすでに少数派で、そのアパートもたしか築40年近かったと思う。

TOKYO STYLE (ちくま文庫)

TOKYO STYLE (ちくま文庫)

 

でもその部屋はTOKYO STYLEが大好きで、繰り返し立ち読みしていた僕には,
理想のアパートだったく。好きなのに立ち読み!? すいません。就職してからやっと買ったのですが、当時は渋谷に行けば、毎回立ち読みしていました。ノラ猫の周遊コースみたいな感じで(笑) 18歳の僕には、12,000円はなかなか手が届かなかった。(なんでこんなに高いの?)とは思わなかったから、それくらい価値があることはちゃんと理解していたと思う。

 

いまこの本を読み返すと、写真集だから見るとかな、90年代の東京に住む若者の暮らしを知る上で、とても貴重な資料であることも分かる。社会学的、文化人類学的側面、建築学、インテリア・・・まあなんでもいいですがとにかく色々な読み方ができると思う。僕は小説を読むように、そこに写っていない住人のことを想像しながら読んだ。かつての若者達が確かに暮らした部屋の記録として。なんか泣けてくるんですよね。コンパクト版?のあとがきに書かれている作者の記述によると、田舎に帰ったり、様々な理由で引っ越した人も多く、もう建物自体が無いケースも少なくないそうです。そうですよね。僕もとっくに○○荘を出ているし。10年前くらいにふと思い立って見にいってみた。世田谷区だから地価もとんでもないことになっているハズだが、なんと、まだありました。その時はもう築50年前後。横目でちらっと見て通りすぎただけだけど、住んでいた頃から古かったから、あまり変化は感じなかった(笑) いまは、さすがにもう無いだろうなあ。

 


自分が長年読んできたTOKYO STYLEについて書こうと思ったのは、都築響一がこれまでの仕事を振り返った「圏外編集者」を読んだからだ。過去にもこういった本の打診はあったけれどもすべて断ってきたが、編集者の粘りがあり、「語り」という形で本になったらしい。それきしても帯の文、最高だなあ。“周回遅れのトップランナー”か。

 

圏外編集者

圏外編集者

 

当初TOKYO STYLEの制作は、そのコンセプトを理解してもらえず、また採算もとれそうにないと出版社に相手にしてもらえなかったらしい。あきらめきれない都築響一はどうしたか。予算がつかないのなら自分で写真を撮るしかないと、ビックカメラでカメラを買い、原チャリの足元に乗せられる大きさのライトを買うところから始めたのだ。あの本から伝わってきた熱量の理由が分かった。